はじめに
遠心分離機(遠心機)は、医薬品、化学、食品、環境など多くの産業で使われる重要な装置です。
液体と固体を分けたり、不純物を取り除いたりと大きな役割を果たします。
しかし一方で、高速回転による強大な遠心力 を利用するため、誤った扱いをすれば大きな事故につながる危険性があります。
ここでは「他社で発生した一般的な事故例」をもとに、原因と防止策を解説します。
※以下の事例はいずれも松本機械の製品によるものではありません。
最後に、松本機械が実際に行っている 安全設計の取り組み をご紹介します。
遠心分離機で起きた代表的な事故(一般的な事例)
① 巻き込まれ事故
◆発生状況
作業員が遠心脱水機にホースを固定せず、手で持ったまま散水していたところ、回転体に巻き込まれて死亡しました。
◆原因
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・ホースを固定していなかった
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・作業手順が定められていなかった
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・安全装置が不足していた
◆対策
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・散水工程を自動化する
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・光線センサーや安全マットで接近を検知し自動停止させる
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・作業標準を明確にし、教育を徹底する
② 有機溶剤による中毒事故
◆発生状況
結晶を有機溶剤で洗浄する作業中、換気装置を外したまま作業し、防護具も着用していなかったため、作業員が中毒症状を起こしました。
◆原因
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・換気設備を稼働させなかった
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・防毒マスクを着用しなかった
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・有害性について教育が不足していた
◆対策
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・作業ごとに適切な換気設備を必ず稼働させる
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・防毒マスクなど保護具を正しく使用する
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・化学物質の危険性について教育を徹底する
③ 静電気による爆発事故
◆発生状況
可燃性溶剤を含む原料を遠心分離機に投入中、静電気が発生して爆発が起こり、複数の死傷者が発生しました。
◆原因
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・床材が絶縁性で静電気が溜まりやすかった
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・帯電防止設備や管理が不十分だった
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・投入作業を手作業で行っていた
◆対策
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・帯電防止作業服・靴の使用を徹底する
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・床材を導電性に変更する
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・金属容器を使用し、確実に接地する
④ 廃油精製工場での爆発火災
◆発生状況
廃油を精製する工程で、遠心分離機から白煙が出た後、隣接するタンクが爆発。大規模な火災に発展し、多数の死傷者が発生しました。
◆原因
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・作業手順が不十分だった
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・異常停止後の対応が整備されていなかった
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・揮発性成分が気化し、爆発性雰囲気を形成していた
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・爆発性物質の管理と防爆設備が不足していた
◆対策
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・標準作業手順書(SOP)を整備し教育・訓練を徹底する
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・換気や局所排気設備を設置して蒸気を滞留させない
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・緊急対応マニュアルを策定し定期的に訓練する
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・リスクアセスメントを行い、防爆仕様設備を導入する
労働安全衛生規則に基づく安全ルール
遠心分離機を安全に使用するため、労働安全衛生規則では以下が定められています。
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・遠心機械にはふたを設置すること
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・内容物を取り出すときは必ず運転を停止すること
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・最高使用回転数を超えて運転してはならないこと
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・1年以内ごとに1回、自主検査を実施すること
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・検査記録を3年間保存し、異常があれば補修すること
松本機械の安全設計への取り組み
防爆仕様の設計
可燃性溶剤を扱う現場では、防爆仕様のモーターや現場操作盤を採用し、火花や着火源を極力排除した構造を実現しています。
安全カバーとインターロック機構
回転中にケーシングが開かないよう、電気的インターロック(リミットスイッチや近接センサー)と、ロックシリンダーなどの機械的インターロックを併用。
昨今は両者を組み合わせたより強固な仕様を求めるお客様が増えており、対応を進めています。
緊急停止システム
標準仕様としてバイブラスイッチを搭載し、異常振動を検知して停止。
さらに、振幅計・微振動計・温度計(オプション)を追加することで、ベアリングの予防保全や微細な振動監視にも対応できます。
配管レイアウトの工夫
パイプの配置は、安全を最優先に検討しています。
例として、開閉仕様のKM型は天蓋とケーシングを反対方向に開くよう設計。天蓋が閉じていない状態でケーシングを開けても天蓋が勝手に開くことを防ぎます。覗き窓の配置も同じ理屈で設計しています。
設計思想
松本機械は「人の安全を最優先」に考えて設計を行っています。
打ち合わせの際にも、安全を損なう恐れがある要求は納得いただけるまで説明し、ご納得いただけない場合はお断りすることもあります。
お客様から寄せられた声
松本機械の遠心分離機を導入いただいたお客様からは、次のようなお声をいただいています。
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・「作業員が安心して使えるようになり、現場の緊張感が和らぎました」
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・「防爆仕様のおかげで、可燃性溶剤を扱う工程でも安心感が増しました」
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・「定期点検のサポートがしっかりしていて、導入後も心強い」
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・「安全カバーとインターロックのおかげで新人教育もしやすくなった」
まとめ
遠心分離機は便利で産業に欠かせない装置ですが、誤った扱いは大事故につながります。
事故事例から学べるのは、どの現場でも「作業手順」「安全装置」「教育」の徹底が不可欠だということです。
そして、こうした人の努力に加えて、安全を最優先した機械設計 も欠かせません。
松本機械はこれからも、安全で信頼できる遠心分離機を提供し続けます。
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